セルゲル法の3年後経過観察:スロベニアの報告
セルゲル法はヨーロッパをはじめ、世界の様々な国で導入されている腰痛治療法です。
その安全性や有効性は数多くの論文で報告されています。
今回は、スロベニアの医師が報告している論文を元に、セルゲル法(ディスコゲル)の有効性に関して解説します。
スロベニア医師の研究
2014年5月~2015年12月の間でディスコゲルによる治療を受けた83名の患者(うち、頸椎治療:16名、腰椎治療:67名)が研究に参加しました。患者の年齢は18歳~79歳でした。
この研究に参加した患者は、椎間板変性が認められており、頚部痛または腰痛・下肢痛(坐骨神経痛)で悩んでおり、ディスコゲル治療を受けることになりました。
治療前と治療後は、自覚症状、身体活動、内服の有無、仕事への復帰が確認されました。
治療後のフォロー期間は、自覚症状は治療1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後、36ヶ月後で、運動できるレベルは治療6ヶ月後と1年後でした。

研究結果
合併症
治療後は、感染症や出血などの合併症が認められませんでした。
1名の患者のみですが、治療後に頭蓋内水腫を伴う機能不全症候群が発見されました。ただし、損傷の既往歴のある患者で、ディスコゲル治療による合併症ではありませんでした。
疼痛の改善
治療前後の自覚症状はCore Outcome Measures Index(COMI)とVisual Analog Scale(VAS)を用いて評価されました。
頸部の治療を受けた患者の76.9%は改善が見られました。治療前のVASの平均数値が8.6で、治療1ヶ月後には4.1、6ヶ月後には3.8、1年後には3.9、2年後には3.7、3年後には3.9に下がりました。
腰部の治療を受けた患者の93.5%は改善が見られました。治療前のVASの平均数値が8.5で、治療1ヶ月後には4.5、6ヶ月後には3.7、1年後には2.8、2年後には2.6、3年後には2.4に下がりました。

*Visual Analog Scale(VAS)とは、患者が感じる痛みの強さを指し示すスケールです。紙の上に10cmの線を引いて、左端に0(=全く痛みなし)、右端に100(=想像できる最大の痛み)と書いて、患者に、現在の痛みが0〜100の間のどのあたりになるのかを指し示してもらうことにより、痛みを評価します。
鎮痛薬の服用
多くの患者(78%)は治療後に、服用する痛み止めの量を減らすことができました。
身体活動
治療前は、96.6%の患者は、中等度~重大な身体活動制限がありました。
治療6ヶ月後は、それが42%まで下がり、治療1年後は30%以下となりました。
仕事への復帰
治療を受けた患者で、23.7%は定年後で仕事をしていない人でしたが、71.1%の患者は治療後に元の仕事に復帰できました。
治療満足度
95%の患者は治療に満足していました。
また、4分の3の患者は、もしも必要になった時に再度を受けたいと答えています。
結論
セルゲル法(ディスコゲル)は、より低侵襲で、リスクの少ない治療です。
3年間のフォロー期間で、腰痛などの症状が70%改善し、頚部痛が50%改善しており、有効な治療だと確認できています。
参考論文
Dimitrij Kuhelj, Anita Dobrovolec, Igor Jozef Kocijancic. Efficacy and durability of radiopaque gelified ethanol in management of herniated discs. Radiology and Oncology. 53(2), 2019.