椎間板変性症に起因する疾患
セルゲル法は椎間板の変性が原因の疾患に有効な治療です。
今回は、椎間板変性とは何か、椎間板変性に起因する疾患に関して解説します。
椎間板変性症とは
正常な椎間板は、衝撃を緩和するクッションの役割、背骨を支える支持性、背骨を動かす運動性の役割を担っています。
椎間板に過度の負担がかかると、椎間板は元の形を保てなくなります。これは椎間板変性症といいます。

椎間板変性症の症状
椎間板変性症の主な症状は、腰痛と坐骨神経痛(下肢の痛みとしびれ)です。
椎間板の変性が進めば進むほど、様々な疾患が発生してしまい、下肢の感覚障害、間欠性跛行などの症状も生じてしまいます。
椎間板変性症から始まる脊椎疾患
様々な脊椎疾患は椎間板変性から始まる、と多くの研究でわかっています。
椎間板にかかる負荷により、椎間板終板が変形していきます。その結果、椎間板内圧が低下して、椎間板の高さが減少します。それで、椎間関節などに余計なストレスが加わってしまい、関節も変形していき狭小化してしまいます。
椎間板自体は、外の部分である線維輪が亀裂して、中の髄核が飛び出て、椎間板膨隆、椎間板ヘルニアになっていきます。
さらに、ヘルニア部分により脊柱管が狭くなり、過度な負荷のせいで黄色靭帯が肥厚して、脊柱管狭窄症となります。
変性による椎間板の高さの減少と、椎間板終板の変形で、椎体骨端部の骨棘が生じたり、背骨が不安定になってすべり症などになったりしていきます。
このようにして、椎間板の変性から始まり、様々な脊椎疾患が発生していきます。
椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、椎間関節症などは医療界で、椎間板変性疾患(英語:Disc Degenerative Disease)と呼ばれています。
パキスタン医師の研究
ここでは例として、パキスタンのカラチ公立病院の患者を対象にした研究をご紹介します。(Shafaq Saleem, et al. Lumbar Disc Degenerative Disease: Disc Degeneration Symptoms and Magnetic Resonance Image Findings. Asian Spine Journal, 2013, 7(4).)
2012年1月から6月の間で受診した163名の患者(20~70歳、平均年齢:43.92歳)のMRI検査結果から、次のようなことがわかりました。
・椎間板変性症も、それに起因する疾患もL4/L5とL5/S1で最も多い(L4/L5:64.4%、L5/S1:46.6%)
・163名中157名は、椎間板の高さの減少が認められている
・109名は椎間板ヘルニア、37名は脊柱管狭窄症、4名は椎間関節症と診断された
・137名は椎間孔狭窄症も認められた(椎間板ヘルニアの診断:86名、脊柱管狭窄症の診断:37名、椎間関節症の診断:2名、椎間板ヘルニア+椎間関節症の診断:3名、脊柱管狭窄症+椎間関節症の診断:2名、椎間板ヘルニア+脊柱管狭窄症の診断:7名)
・62名は黄色靭帯肥厚が認められた(椎間板ヘルニアの診断:23名、脊柱管狭窄症の診断:28名、椎間板ヘルニア+椎間関節症の診断:3名、脊柱管狭窄症+椎間関節症の診断:2名、椎間板ヘルニア+脊柱管狭窄症の診断:6名)
・15名はすべり症も併発している(椎間板ヘルニアの診断:7名、脊柱管狭窄症の診断:7名、椎間板ヘルニア+脊柱管狭窄症の診断:1名)
まとめ
パキスタン医師の研究結果を見ると、様々な脊椎疾患は椎間板の変性から始まり、変性が進むことに伴い、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、すべり症などが発生していくことが窺われます。
様々な疾患が併発すると、治療を受けても効果が出るまでに時間がかかったりしますので、脊椎疾患の予防目的としても、椎間板変性症に対する治療を受けた方が良いでしょう。